ヤクザと執事と私 1
その日は、いつもより暖かい日だった。
といっても、あくまでいつもよりであって、その地になれない人からすれば、十分寒い日である。
真木ヒナタは、そんな中、道の端に体を丸めて座っていた。
目だけは、行きかう人をしっかりと確認しながら。
そんな真木ヒナタの前を1人の杖をついた老人が通りかかった。
片手にセカンドバックを抱えている。
見るからに裕福そうな老人。
ただ、女性を獲物と決めていた真木ヒナタは、男性であったので、ちょっとためらいを覚えたが、心に余裕のなく、焦っている真木ヒナタは、その老人に狙いを定めた。
真木ヒナタは、ゆっくりと立ち上がると、気づかれないように、老人のあとをつけて、一定の距離をとって歩く。
ひったくりをするには、周りに他の人がいないのが、最低条件だった。
焦る気持ちを抑えながら、真木ヒナタは、我慢強く、老人のあとをついていく。
10分ほどあとをつけたところで、運良く、老人が路地裏に入ってくれた。
チャンスとばかりに、真木ヒナタは、老人との距離を縮め、周りに誰もいないのを確認して、一気に老人のセカンドバックをひったくった・・・はずだった。
セカンドバックをひったくったはずの真木ヒナタは、その真木ヒナタの思いとは違い、路上に倒されて、首に老人の杖があてられていた。