ヤクザと執事と私 1
そして、1週間後、真木ヒナタは、老人のくれた名刺に書いてあった店の前に立っていた。
一度は死を覚悟した身の上、今さら取引の相手が悪魔であろうと関係ない。
強い決意をもって、その店の扉と開けて、真木ヒナタは入っていった。
それから2年後、ひとつの噂が流れはじめた。
深夜にどこからともなく女の子供が現れたら、すぐに逃げろ。
その女の子は、死神。
お前の魂を喰らってしまうぞ。
よくある都市伝説と思われ、面白がって人々の間に瞬く間に広がっていったこの噂は、それから3年は消えることがなかった。
なぜなら、少数だが実際にその女の子供の死神を見たという人があとを絶たなかったから。
そして、その死神を見たという話が出た後には、必ず実際、死体が見つかっていた。
その死体をつくった犯人は、結局、見つからなかった。
まるで、本当に死神が殺したかのように。
死神は捕まるわけはない。
存在しないのだから。
そう、まるでゴミと認識され、存在を否定されているストリートチルドレンのように。