ヤクザと執事と私 1

第7節:真木ヒナタの過去 2





真木ヒナタが死神と呼ばれ始めて、3年が経った。


そして、もう町では、人々がこの噂を表立って口にすることも無くなっていた。


人々もこの3年で気づいていた。


死神はマフィアの殺し屋。


わざわざ口に出し、噂を広めることは、今や自分の寿命を縮める行為にもなりかねない。


法律には書いてなくとも、世の中には守らなければ死刑になる規則もある。


この土地では、法律よりも重要なのは、その法律には書かれてない規則のほうだった。


人々は噂という物が好物であるが、命を賭けてまで好物を食べる者などいない。


町の人々の噂は、死神から神隠しへと移っていた。




最近、町から子供の姿が消えている。



そんな噂が立ったのも、町の人が少しは、ストリートチルドレンのことを気にしてくれているからなのだろうか。


真木ヒナタは、神隠しの噂を聞くたびに、そんなことを思っていた。



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