ヤクザと執事と私 1
ハルさんは説明するのが面倒といった感じで私を見つめ、
「大丈夫だよ、小夜。別に、小夜をやくざに売り飛ばそうとしてるわけじゃないんだから。」
と言うと、私の手を引き、門の横にあるインターホンを押す。
(ちょっとーーー説明もなしに何してんのよ!ハルさーーーーーん!)
私は心の中で絶叫を上げる。
インターホンの返事なしにいきなり、門の横の人が入るための扉が開いた。
中からは、一見してやくざとしか見えない若い男が出てきた。
「おう、ハル婆じゃねぇーか?どうしたんだ?」
「ちょっと組長さんと約束しててね。入れてもらえるかい?」
ハルさんは仲良さげに出てきた男と会話を交わす。
「ちょっと、待ってなよ。」
男はそう言い残して、再び扉の中に戻っていった。
今の私は、まるで売られる小牛のような心境だ。
バックミュージックはドナドナに間違いない。