ヤクザと執事と私 1


建物の中に入ってから、私とハルさんは、広い畳の部屋に通された。


この部屋に来るまでに私に確信できたことは、ひとりだと必ず迷子になるということ。


その確信が持てるくらい、とにかく家の中が広い。




5分くらい待っていると、部屋に急に人が入ってきた。


甚平姿の若い男だった。


たぶん年齢は25歳~30歳くらいで、身長は180cmくらい。


黒髪の短髪。


精悍な顔つきをしていて、動物に例えると狼のような感じ。



その男がいきなり私の腕を持ち、無理やり私を立ち上がらせた。


そして、私の顎を腕を掴んでいる手とは逆の手で掴み、私の顔を無理やり上に向ける。


男は私にキスするんじゃないかと思うほど、顔を近づけてきた。


じっくりと私の顔を舐め回すように見ている。


私は掴まれている腕が痛み出していた。


それほど男は、力いっぱい私の腕を握っている。


(もう!痛いじゃない!)


私は腕の痛みに耐えかねて、思わず男をそのまま合気道の技で投げてしまった。


(あっ!!!)


後悔した時は、もう遅く、男は1回転している。

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