ヤクザと執事と私 1
自転車だと歩くのと違い、10分程度で豪邸に到着した。
いつ見ても、現実感のない豪邸。
私は、朝なので、あまり響かないように入り口の扉をノックした。
少しして、眠そうにあくびしながら、最初来た時にサブと呼ばれていた男が現れた。
「おう、来たか。執事さんから話は聞いてるぞ。入れよ。」
サブは私が説明する暇もなく、すぐに中に入れてくれた。
「自転車はそこにでも置いときな。」
サブは、私が自転車をどうしようか迷っているのをみて、すぐに指図をしてくれた。
「俺は、村上隆ってんだ。よろしくな。」
サブは、眠そうな笑顔で私に片手を差し出す。
「あっ・・・お、俺は、三河小夜・・です。よろしくお願いします。」
私は恐る恐るサブと握手をする。
やくざの人間とまともに話すのは初めてで少し怖かったから。