ヤクザと執事と私 1
すると、男は退くどころか私を背中に隠してヤクザたちの前に立ちふさがった。
「失礼致します、皆様。何かお怒りのようですが、ここは一つ紅茶でも飲みながら、落ち着いてお話をされてはどうでしょう。」
男は場に合わない笑顔でヤクザを諭す。
「はぁ~?お前は馬鹿か?ヤクザなめてんのか?」
ヤクザが、男を取り囲む。
「いえ、私は馬鹿ではございません。ましてや、皆様を舐めるなんて失礼なこといたしておりません。」
(うぁ~、この人、もしかして天然?)
私は、助けておいてもらいながら、思わずそう思ってしまった。
ヤクザ相手に言葉で解決するはずはない。
子供でも知っている常識だ。
ヤクザの1人が、男の顔を殴りつける。
「これでわかったろ、兄ちゃん。どけ。」
ヤクザが男をさらに威圧する。