ヤクザと執事と私 1
「いえ、持ってません・・・」
携帯電話・・・
ちょっと前は、本当に欲しくて、欲しくてたまらないものだった。
でも、家では、持たせてもらえなかった・・・
その当時は理由がわからなかったが、両親が死んだ後でその理由がわかった。
家には、ヤクザがおしかけてくるほど、お金がなかったのだ。
そんなことを考えていると、死んだ両親のことを思い出し・・・目から涙が出そうになる。
「大丈夫ですか?」
執事が私の変化に気付き、心配して声をかけてくれる。
「・・・はい、大丈夫です。」
私は、必死に涙をこらえ、作り笑顔をする。
そんな私の心境を察してか、執事は私の頬に執事の大きな手をあて、
「ハルさんから、ある程度の事情は聞いています。・・・つらい時は、泣いてもいいのですよ。」
と深い優しさをこめた声で私に声をかけてくれる。