ヤクザと執事と私 1
そこからは、ヤクザ3人と男の殴り合いになった。
ただ、殴り合いといっても、一方的に男がヤクザを殴っていたのだけど。
一方的な暴力はすぐに終わった。
ヤクザの3人は鼻や口から血を流しているのに対して、男は無傷。
ただ、男の服は、ヤクザの返り血で紅く染まっている。
「お前、何者だ?」
ヤクザの1人が男に聞いた。
「名乗るほどのものではございません。私は、ただの執事でございます。」
男が謙虚に語り、ヤクザに軽く頭を下げる。
「ま、まさか・・・紅の執事・・・か?」
ヤクザの3人に動揺が走るのがわかった。
「いえ、私は、ただの執事でございます。」
男は誠実に答える。
ヤクザの3人は私にむかって、「今日は・・・見逃しといてやらぁ~。」というと必死で逃げていった。
「ありがとうございます。」
私は、男に頭をさげる。
「いえ、私の力が足りぬばかりに、このような事態になり申し訳ございません。」
なぜか男は私に謝った。
「そんな。私の方こそ、巻き込んでしまって・・・服も血で・・・」
男の服はヤクザの血がどっぷりついている。
「お気になさらなくて結構です。替えの服はありますので。」
男は、そういうと「主人が待っておりますので、失礼致します。」とその場を風のように去っていった。
私は、とりあえずアパートに戻ることにした。