週末の人魚
FM
まだ早い時間なのに海は海水浴客でごった返していた。
色とりどりのビーチパラソル。
光る波しぶき。
照りつける太陽が二人を子供に戻した。
海からの帰り、友達から借りたワゴン車はFMラジオが流れていた。
些細な事が原因でまた喧嘩をしていた。
渋滞の列の中、もう20分も口をきいてない。
彼女もなかなか謝ってこない。
気まずい時間が続いた。
ここで降ろして!まだアパートまではかなりの距離がある。
勝手にしろ!渋滞の国道から彼女はいなくなった。
それからの帰り道は経験したことの無い程切なく長く感じた。
友達に車を返した後、いつもの無印ショップに無意識に寄ってしまった。
珍しくレジに並び、ストライプのシーツを買った。
とぼとぼと商店街を抜けアパートが見えてきた。
部屋に明かりは無かった。
洗濯物を洗濯機に放り込み、ベッドに倒れこんだ。
彼女の匂いがした。
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