魑魅魍魎の菊
時計が見たもの
私は植木君から貰った林檎味のロリポップを舐めながら、窓辺に項垂れる。
早く学校に来過ぎたせいか教室には私しか居ない、グランドには野球部が頑張って練習している姿が見られる。
(…何か餌付けされている気分、)
未だ包帯は取れないし、昨日も軽く鴉丸に傷口縫われたもんな…。鴉丸ったら容赦無いし恐い。
唯一優しかったのはリチャードだけよ、ライアンは笑いまくってクッションを叩きまくっていたし。
そうしながら時間を潰すのだが、私は校門に目を向けるのだ。色々な人が登校してきて、窓から流れる風にふと愛おしさを感じる。
にしても、植木君がいつもくれるロリポップは美味しいな…。流れる時に身を任せていると、徐々に人が増えてくるのだった。
「菊花おっはよ〜!!会えなくて寂しかったよ——!!」
ガバッと効果音がつくぐらい私は背後から誰かに抱きしめられたのだ。ちょ、ちょいちょい…私一応重傷患者なので労って欲しいのですが…
「え、栄子…。おはよう、風邪は大丈夫?」
「元気百倍だよ!——って、その顔と体はどうしたの?!女の子の顔に傷だなんて!!」
「い、いや…」
「お、お嫁に貰ってもらえないじゃないの!!」
「あ、あの少しぐらい傷ついても代わり映えなんてしないよ」
苦笑しながら右手で手を振るが、栄子は泣きそうな目で「誰か救急車——!!」と叫んでいるのであった。
「り、利枝!どうしようあたしの菊花チャンが!!」
「あー…栄子大丈夫だって、菊花が怪我してもそう代わり映えしないし」
「せめて本人が居ない所で言おうよ利枝サン」
友情って何ぞやと思いながら私は栄子の頭を撫でて上げた。
どうやらただの風邪だったらしく、完治して学校に出て来た下りであるのだ。