魑魅魍魎の菊
この思いを消すには、あまりにも切なくて…
伝えたいんだ。好きだったんだよと。
君の笑顔さえあれば、接客の苦手な俺も頑張ろうって思えたし、何より一日元気になれんだ。
「加藤さん…」
「——…加藤、」
「俺、俺っ……——本当に好きだったんだ、生きて……あの子、守りたかった」
——ザワリ——
その瞬間、正影の中で何かが疼いたのだ。
加藤は腕で顔を隠しながら泣いている。顔がぐしゃぐしゃになって本当に情けないが。
何かを守りたいいう姿にどうしてだか、自分の姿が重なったのだ。
「…ぐっ…。思いが叶うとか、そんな高望みなこと…思ってないけどさっ——俺の気持ちに"答え"が欲しかったんだよっ…」
運命とは、何て皮肉なんだろう。必然とか、偶然とか——そんなの全てを引っ括めても何て"皮肉"なんだろうとつくづく思ってしまうんだ。
「——ちょっと待ってよ、"守りたかった"って…」
高村がそう声を上げ、立ち上がった。
「…ん、んぅ?何だい高村さん?」
「加藤さん、アンタ先輩のストーカーじゃなかったの?!」
「え、えええええ?!お、俺そんな犯罪めいたことなんてしてないし!!だ、第一俺は雛ちゃんのストーカーを倒したこと一度あるし!」