魑魅魍魎の菊
目の前に現れたのは"陰"の力を帯びた、夥しい数の悪霊たち。
「——なぁ、《魑魅魍魎の主》とやら。"陰"の力とは、こんな薄暗くジメジメした所を好むのか!!」
正影は式神を使いながら、怨霊たちを滅している。
「そうかもしれないわね!でも、私は思いっきりアウトドアよ!!いけ、水陣・龍の舞!!」
菊花の陣からは水の龍が舞うように怨霊達に突っ込んで行く。その光景を惚けたように見つめる加藤は改めて二人の力に目を見張るのだった。
それもそうだ、幽霊になってからといってこのような光景を早々見れるものではないのだ。
「光を統べる《鳳凰の力》を解放せよ!」
その瞬間、正影の刀には炎が帯び始め次々に怨霊に突っ込み斬り続ける。
あまりにも熱い炎に昨夜のトラウマを思い出す菊花だが、ここには光が無い分自分の力が発揮できないのだ。
(…闇に、女を、——葬って…)
「ごちゃごちゃと、うっせぇんだよコノヤロー!!!」
——お母さん?今から帰るねー。えっ?変質者?大丈夫だって、近道して帰るから!
加藤の動きが止まったような気がした。
それは若い女の子の声、菊花の声ではなくて——高いソプラノの心地良い、自分の大好きな、死んでも尚大好きだった声が聞こえた。
「たたた、高村さん!!??」
「解っているわよ!!!こんな怨霊、誰よ相当恨みがあるのね?!」
「なんつー卑屈な人生歩んで来たんだよコイツ等!!埒があかねぇよ!」
夜の闇は濃くなり、段々と怨霊の力は増し。小泉雛の足音も近づいて来るのだ。