魑魅魍魎の菊



と、その瞬間。加藤の瞳孔が軽く開いたのだ。

死んでいるのにその表現はおかしいが、だが驚くものが自分の瞳に映った。












忘れもしない、雛の背後には下衆な笑みを浮かべた男がいたのだから。







目の前に立ちはだかる壁も見方を変えれば、——大きな扉。





気がつくと加藤は走り出し、一心不乱で走り出した。

不安によく似た真実の光が一瞬だけ見えたような気がしたんだ。雛の横を通り抜けると、男は下衆な笑みを浮かべ雛に抱きつこうとしており。



雛は——振り返ってしまった…







「——ひ、ヒィィィ!!!???」




悲鳴にも似た声が出た瞬間だが、自分には衝撃が来なかった。





「えっ……?」





目の前には、白と紺色のボーダーのポロシャツを来た人がその男を投げ飛ばしていたのだったから。



「——何すんだテメェ!!!???」


巻き舌加減の叫びに雛はすくみ上がった。だが、目の前に居る男性が男に馬乗りをして何発が殴ったのだった。



「ふ、ふざけるな!!お前こそ、幼気な少女に何しようとしてんだよ!!」



 
< 110 / 401 >

この作品をシェア

pagetop