魑魅魍魎の菊
ジェイソンに蹴られろ
「んぁ…チッ、地味顔かよ。…雛の代わりには、萎えるっつうの…」
「待て待て待て…高村、押さえろ」
正影は暴言(?)を吐いている変質者に襲いかかろうとしている菊花を全力で止めている。
「ちょっと、アンタ私の何を知ってるの?!」
「ヘッヘッヘ……そっちの男の方が良い顔してるじゃねぇか、体貸せよ…」
下品な笑みを浮かべ、腫れた頬を押さえる変質者に容赦無く踵落としを決めた正影。その顔は影が含まれており、表情は解らなかった。
「オイオイオイオイ…玖珂君、」
「制裁だコノヤロー」
そして、先ほどの怨霊はこの男の一部分からも出ていることが判明した。何度も思うがこういう能力を持つと見えたくないものまで見えて来る。
人の恨み、妬みは早々消えるものではない。死んでなおも力が増すものがあるというのも忘れてはいけない。
「……あの野郎、"俺の"雛を…よくも!!」
正影は口を引き攣らせ、
「俺の…?」
菊花も眉をぴくりと上げ、
「雛、だって…?」
そして互いに言葉なんていらない、そんなことをまた考えてしまった。
「——この世に溢れる悪行三昧、」
正影は《鳳》を構えながら、一歩出る。
「——断じて許しまじその悪行、」
菊花は数珠を嵌め直して一歩出る。
「お、おい…」
「「人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて死んでしまえ——!!!!!」」
「ぎゃあ、ぎゃあぁぁぁぁあああああ!!!!!」
正影と菊花は変質者ことストーカーに強烈な飛び蹴りを喰らわし、伸びる影を刀で突き刺したのだった。
(ふっ…今日も良いことをした)
(…ストーカーの邪心を滅した私、格好良い)
訳の分からないことを二人は考えるのだった。
月夜を静かに歩き出す二人は案外に似た者同士だったのかもしれない。