魑魅魍魎の菊
「まぁとにかく。事は一件落着したから、帰るとしますかー」
私は電車通学なので駅の方向に歩き出せば——
パシッと玖珂君に腕を掴まれてしまった。
少しだけ"男"を感じる私が居たのでした。
「…く、玖珂っち…?」
「お前が"玖珂っち"言うな。——まぁ、何だ…この前はウチの者が失礼なことして悪かったな」
オイオイ、こんなのを学校の女の子に目撃されたら射殺されるよ…。
でもまぁ、人と人が歩み寄る瞬間って何て素敵なんだろうかね。私達は短い時を生きて行かなければならない。
「別に良いのよ。先日の百鬼夜行は全面的に"私が"悪いんだから。詳しい事情は後日また」
私は薄く笑いながら、玖珂君の気持ちが嬉しくてふと心が温かくなった。離れる体温に名残惜しさを覚えながら私は歩き出す。
「それじゃあ、玖珂君。また学校でね?」
右手で手を大きく振れば、あっちも控えめながらも腕を挙げてくれた。
——さぁ、みんなで手を上げようよ。
「じゃーなっ!!"高村 菊花"!!」
私達は歩き出す、それは何処なのか解らないけれど進むんだ。
菊花は鞄からミュージックプレーヤーを取り出し、耳にヘッドホンを装着させる。
機械から紡がれる音楽に、人と《目に見えないもの》の温かさを感じながら心を弾ませるんだ。