魑魅魍魎の菊
猫の物の怪の下からブラックホールのような、赤黒い空間が突如現れたのだ、
……風が巻き起こり、泣き叫ぶ物の怪。命乞いをしているのにも関わらず冷たい顔で見下ろす女。
「お、お慈悲を…た、助けて助けて助けて……誰かっ!!消えたくない、消えたくない…ぎゃ、ぎゃあぁぁぁぁあああああ!!!!」
その空間に引きずり込まれる物の怪…。
思わず耳を塞ぎたくなる、俺は——あの女に勝てる、だなんて思えない。"恐怖"が先走って、体の震えと鳥肌が止まらない。
(な、何なんだ……あれじゃまるで——死神じゃないか、)
そして、地味な女は何事が無かったように——図書室のカウンターに戻って行った。
吐き気が止まらない、
胃の中がムカムカしてきて…
肌も鳥肌が立って、寒気すらするのだった。
(…逃げよう、)
龍星は震える足で走り出した。もう本なんかどうでも良い——あの異様な空間から一刻も逃げ出したかった。
「何なんだ何なんだ何なんだよ——!!!」
あの…背筋が凍る程の呼吸が出来ないくらい凍り付いたオーラと雰囲気…。
俺は生まれて初めて、ヤバいと感じた瞬間だった。
耳の奥に響き渡る、物の怪の叫び声…。助けることがで本当に出来なかったのかよ俺…