魑魅魍魎の菊
——バタンッ!!!
「…っぁあ…」
「…お、おい…大丈夫か?」
俺は思わず、ぶかってしまった相手に声を掛けた…。確かコイツは…
「…玖珂、お前大丈夫か?」
「萩原…。テメェ俺に慰謝料払えよ」
「お前何時の時代のチンピラだよ!!」
隣のクラスでよく女に騒がれている「玖珂正影」だ。…数学の時間、席が隣になるからよく話すが…
コイツってこんな性格だったか?
龍星は正影を引っぱり、立たせたのだった。…そして、少しでも見知った人物に出会ったことに喜びを覚えた。
…いつまでもあんな空間に一人で居たら、精神がぶっ壊れていたに違いない、
「どうした萩原…。そんな血相変えて走って」
「…な、なんもねぇよ」
「そうか。俺はてっきり、また誰か潰すのかと…」
「テメェの中で俺はどんなんだよ」
玖珂に小さくチョップを入れて歩き出す。
「俺ァ、売られた喧嘩は買うが。自分から売るような馬鹿、しねぇっつうの」
龍星の後ろ姿を見つめる正影は一気に表情が冷えたものになった。
(——あの女、必ず滅してくれる)
図書室から感じた"殺気"にもよく似た"陰"の力。
あれは紛れもない"高村 菊花"のものだ。…加藤の件から少し見直したら、やっぱり根っこの部分は腐っていやがった……