魑魅魍魎の菊
「テメェ——一体何を企んでやがる」
「いだだだだだっ…。あ、愛の制裁がとっても痛いよ玖珂君…」
菊花は正影に力の限り頭蓋骨を掴まれているため、ミシミシと頭が軋んでいるのだ。
そして、同じカウンターに座っている係の女の子が目をハートにさせてますぜ玖珂の若頭よ…。
そのまま力の限り無理矢理私は図書室の隅に連れ込まれたのだった。
「ちょっとー。玖珂君、私の事そんなに好きなのー?密会的な感じがするねー」
「黙れクソアマ。俺ァ、テメェみたいな地味な面した女は御免だ」
「それ差別ッスよ?!」
正影は冷たい表情で菊花を見下ろして、こう言う。
「…何を企んでいる。ここで一匹妖怪が消えたよな」
その言葉を聞いてもなお、菊花の表情は変わらずヘラリと笑っているだけ。
「何を言っているのか解らないな?」
「恍けるんじゃネェよ!!」
低く唸りながら、正影は菊花の胸倉をつかみあげる。例え女だろうが、この"女"だけはどうしても許せないのだ。
「自分の仕事が邪魔されたから怒っているわけ?」
「はっ…?」
「本来、妖怪退治は陰陽師の仕事。——自分のテリトリーが穢されていることに憤怒しているの?——無駄な殺生をしている、"私"が許せないのかしら?」
——ガタンッ!!
「…舐めた口訊くんじゃネェぞ、このクソアマ!!」
正影は菊花を壁に強く打ち付け、尚も胸ぐらを掴み上げて。やり場の知れない怒りを覚えるのだ。
「あはははっ——。
陰陽師風情がふざけたことを言うな」
突如、氷のように冷めた表情になる。——何処までも冷たく、眼光すらも全てを凍てつくのだ。