魑魅魍魎の菊
ウチの近くにある公園に辿り着いて、俺は自分が飲む予定だったお茶を女の子に差し出した。
最初女の子も貰うのを渋っていたが、俺が落ち着くからと言えば…素直に飲んでくれたのだ。
…身長はやや小さめで真っ黒な髪がいかにも清純さを引き立てる。白いスカートから伸びる四肢は滑らかな肌色で…現代の女子高生でここまで"透明さ"を引き立てている女は居るかと考えてしまった。
自分はこの歳の割には185も身長があるので、女の子が余計に小さく見える。
「…変なこと、されてネェか?」
「…うん。腕、掴まれただけ…」
「そっか。何もされてねぇなら、それで良い」
歳は中学生ぐらいで…塾に行く途中なのか?もうすぐで日が沈もうとしているからな。
今の時間なら塾に行こうとする中学生をよく見るからだ。…だが、この娘は手持ち無沙汰で何処かに行く予定は無さそうだ。
「俺は萩谷龍星。お前は?」
女の子が口を開こうとした瞬間、
——グゥウ——…
「…っぷ、何だあ?お前、腹減ってるのか?にしても、情っけねぇ音だな〜」
女の子の腹から情けない腹の虫が聞こえたので、俺は吹き出しながら鮭のおにぎりを差し出したのだ。
「…ん?」
「やるよ。腹減ってるんだろう?食えよ」
おにぎりを掴む指はとても細くて、綺麗だった。今時の女みたいにキラキラとしたネイルをしていなくて…
自然な美しさって奴なのか?…そういうものをこの少女から感じ取ったのだ。
「ありがとう」
やっと見えたほころんだ笑顔がとても綺麗ということも付け足しておく。