魑魅魍魎の菊
——チリン、チリンっ…
ポケットの中から聞こえて来る鈴の音。どうしてだか、この娘のイメージのようにも聞こえた。
小動物みたいにおにぎりを頬張る姿はハムスターを彷彿させて、俺の顔も自然と笑顔になるのが解った。
どうしてだろうな、コイツ見てると…なんだか餌付けさせたくなる。
「お前、家は何処だ?」
「——解らない」
えっ…?
「わ、解らない?!」
大きな声を出すが、全く怯まない少女。
「——うん。解らないの」
と、その瞬間だった。異様な空気がまた渦巻き、ふと先ほどの「地味女」のことを思い出してしまった。
「だけど、
——貴方を食べたら、思い出せるかもね」
俺の茶眼に映ったのは、"人間の少女"ではなく"大蛇"だったのだ。