魑魅魍魎の菊
《見えない何か》が見える龍星は解き放たれた体でバランス良く着地をした。
「……ほぉ、運動神経だけは良いらしいな」
「お、お前っ…」
赤い着物を着衣し、女形のような化粧を施し…両頬に何やら模様がある…そいつの声に聞き覚えがあっのだ。
「…く、玖珂か…?」
「残念ながら俺に見惚れるのは御免だぞ?」
「やっぱ、玖珂だな」
今の発言からして100%アイツしか居ない。…そして、水色の着物を着た女の子が胸の前に鏡を翳しており…
おどろおどろしい声を上げている蛇は何やら悶え、苦しんでいた。それに襲いかかる巨大な狐。
オイオイオイオイ……なんて非現実的光景なんだよ。何だよ、コレ…
「……玖珂、…これは一体…」
「後で説明してやる。…お前も数奇な運命に翻弄されているな」
一体何を言ってやがる、そう言おうとした瞬間——
玖珂と龍星の体がピタっと動かなくなり。二人共、身に覚えのある"殺気"に体を小さく震わして…
じわりと嫌な汗をかくのだ。——脳内に現れたのは、何故か"般若"だった。何故今、般若なのか…
そう疑問を抱くが、その力の発祥地を二人同時に——時計の上を見上げれば居たのだ。
《魑魅魍魎の主》が。
黒い着物を着衣し、刀を腰に携えたその人が。