魑魅魍魎の菊
御当主の市太郎さん
「え、えっと…」
玄関で戸惑っているスーツのおじ様に私は惚れそうになりながらペコリと頭を下げた。
「同じ学校の二年・高村菊花と申します!!玖珂の当主様!」
「……隣のクラスの、萩原龍星…ッス」
玖珂のおじ様は二枚目俳優のような素敵なオーラが放出されております!
そして、私の肩に担がれている玖珂君を見た瞬間ギョっとした表情になった。そして蛇の子の首からの出血が酷い。
「…こ、これは…!!」
「玖珂君とこの蛇の子の治療をお願いします玖珂さん」
私は二人を下ろしながら、颯爽と踵を返してさっさとバイトしに行こう思ったら…。
パシッと玖珂の御当主に右腕を掴まれてしまったのだ。あまりにも強く握りしめられたから顔が歪むのを感じた。
「君が一番酷い怪我だと思うけど」
「——いえ、自分は大丈夫です」
「殆ど"妖力"で保っているいだろう?君もまとめて治療するから」
*
——阿鼻叫喚。
まさにその言葉が相応しいだろう。私が御当主の後ろを歩いていると、玖珂の者が叫ぶのが聞こえる。
そして、萩谷君が玖珂君を背負っているのでどうしたものかとまた泣き叫んでいるから情けない。
——といっても、私が悪いんだろうけど。