魑魅魍魎の菊
朧月を背後に
「久しぶりだな、"高村 菊花"」
玖珂君の寝室の目の前には——スザクさんが胡座で座っていたのだ。
「傷の具合はどうですかスザクさん?」
「それは正影か、俺か?」
「スザクさんですよ」
蛇さんも挙動不審になりながらも、スザクさんにお辞儀をしていた。
「まぁ…大分良くなった。お前も…千影や白に噛み付かれ、力を流されて立っているとは中々だな」
「中々所か死にかけでしたけど」
私もスザクさんの横に座って、空の月を見上げた。
「——その額は子狐にでもやられたか?」
「当然の制裁ですよ。もっとやられても良いくらいなのに」
苦笑しながら蛇さんの頭を撫でるのだ。…ゴメンね、恐いよねこの場所は。
「——笛筒、ありがとな」
「何の事でしょうか」
ちょっと…玖珂君ったら、もしかして喋ったわけ?
だとしたら、今から襲うよ?!寝顔写真撮りまくって売りさばいてやる!!
「残念ながらお前の香りがしたんでな。…薄々解った」
スザクは懐から菊花より貰った笛筒を取り出し、指でなぞる。繊細な細工に、実用的なサイズは素晴らしい。
「まぁ…ウチの天狗一族からお取り寄せしたから。あんまり珍しくないですよ」
「天狗のだと?——ほぉ、道理で美しい笛筒だと思った。ありがとうな、菊花」
「!!!???」
す、スンマンセン!そんなセクシーボイスでわざと耳元で囁かないでください!
「スススス、スザクさん?!」
「何だ?男に免疫が無いのか、菊花」
「ななな、名前?!」
今なら照れで死ねる!恥ずかしくて死ねる!
こんなに良い男なら娶りたいけど(?)…ごめんなさい、私人間の男の人と結婚します!