魑魅魍魎の菊
腰に手を回して、頭を撫でながら「あぁ」と言えば力強く抱きしめて来る美鈴。
「……俺も一人暮らしだ。一人増えても変わらねぇよ」
両親からの仕送りはいつも余分なくらいだから、美鈴のような小さな女の子が一人増えても大丈夫だ。
それよか…この子の傍に誰か居なくちゃ駄目なんだ。タカムラは「魑魅魍魎の主」というお偉いさんらしいから手が回らない——
というのは言い訳で、ただ単に俺が美鈴と一緒に居たいだけかもしれないんだ。
「リュウセイ!!」
「んっ?」
と、その瞬間——頬に柔らかい衝撃が。
「なっ…。み、美鈴ちゃん?!あ、あーた何し…して…」
俺はキスされた右を押さえて、まだ幼気な少女に向かって訳の解らないことを口走っていた。
「菊花様が殿方にこうすれば喜ぶと仰っていました!」
——ピキッ…
ふと、青筋が浮かぶのを感じてしまい。
「あの地味女、後で絶対にシバく!!」
萩原龍星の怒声がマンション一帯に広がったのは言うまでもない。