魑魅魍魎の菊
「「……弱過ぎだろうが」」
ボソッと同時に出た言葉に互いに溜め息をつく。そして、菊花が内野に戻って来るのだ。
「高村菊花ァァ!!テメェの力はそんなモンか!」
(玖珂っち……)
正影は大声を上げて菊花に呼びかけるのだが、そのせいで一気に女の子の視線が菊花に突き刺さる…。
(アレレ…私、標的になってねェ?!)
菊花は凄まじいオーラを出すハンドボール部の女子のボールをすかさず受け止めた。
「痛た…。ちょっと変な野次飛ばさないで——よっ!!」
菊花の投げたボールは鋭くてほぼ直線に入って、相手チームを二人もなぎ倒した。
「やるじゃネェか高村!!そのまま脳震盪起こしてやれ——!」
(萩っち、それじゃあデッドボールだよ!)
軽く涙目の加藤は彼らが味方であったことを心底嬉しく思った。
「馬鹿じゃネェのアンタ等——!!!」
殆ど私がボールを拾う状態でどんどん相手にボールを当てていくのだ。…まぁ、球技苦手だけれどドッヂボールの才能だけは恵まれたんだね…。
ていうか相手クラスや周りに居る女子から「どうしてあの二人が"地味女"の応援なの?!」という僻みの声が聞こえるんですけどジェイソン。
つか、アレって応援なの?!頑張れの一言が聞こえネェし!!
そして、確実に狙いやすい子に投げて来る相手クラス…。私はすかさず受け身覚悟でボールに食らいついて体勢を整える。
「オイ、高村!勝ったらジュース奢ってやる!だから勝てよ!」
自信たっぷりの笑みを零す玖珂君の言葉に私はニシシっと笑いながら…
「その言葉、忘れるんじゃない——わよっ!!」
そう叫びながら渾身の力でボールを投げつけたのだ。