魑魅魍魎の菊
そして——
「これ天下一武道会だよね——?!」
加藤の叫び声は遠い空の彼方へ飛んで行った。それもそのはず、現在両方のコートには正影と龍星しか立っておらず…外野にいる生徒はHP瀕死状態にいるのだ。
そして、繰り広げられるバトルがまるでかの有名な「天下一武道会」を彷彿させる。二人の避け方があまりにもアクロバティックで見るものも興奮させていたが、加藤は心底敵に回したくないと思った。
「オラオラオラオラ——!!」
龍星の破壊力抜群なボールが正影を狙うが、ヒラリとまるで日本舞踊のように避ける。
『玖珂くーん!頑張ってー!!』
この世で一番大好きな声が聞こえたので、下を見れば…
「ひ、雛ちゃ〜ん……」
小泉雛が可愛いポニーテールを揺らしながら、正影のことを応援していたのだ。
く、玖珂っちの馬鹿ァァ——!!雛ちゃんが可愛いのは俺が一番知ってるし、優しいのも知ってるのに——!!
ふと、泣いても良いかと聞きたかった加藤であった。
「でも可愛いから許しちゃうもんね——!!!!」
でもやっぱり泣いてしまう。
そんな心をつゆ知らず、二人の戦闘はだんだんと激しくなるのだ。
「……萩谷、しぶといなっ…」
「ハッ——…そりゃ、お互い様だろ!」