魑魅魍魎の菊
「あの極悪非道に悪行三昧には舌が巻かれるっつうの」
互いに挨拶をしてから、隣のコートでやってるドッヂボールを観戦することにしたのだ。
「——確かに玖珂と刀を交えてる時のオーラは半端無かった。俺ァ、高村だけは敵に回したくネェって心底思ったよ」
萩谷は苦虫を潰したような顔をして髪を掻き上げる。……その瞬間、隣のコートに到着した瞬間、血が熱くなった二人の青年。
「ぐああっ……!」
「ちゃんと取ってくれってー、"井上"」
「ゴメーン!当たっちゃった!!」
——クスクス、
——キャハハ、
——アハハハ、
耳障りな笑い声に浮遊している加藤すらも顔を歪めている。
「……あんなの、公開リンチじゃんか」
先ほど出会ったF組の《井上 穂積》が敵味方関係なくボールを集中的に当てられた。
しかも、質が悪いことに——これはドッヂボールだ。井上が当てられて外野に出ても、ひょろっこい腕で強制的に投げさせられるボールにわざと当たる馬鹿共。
相手のクラスはH組でこれまた知らない奴が多いのでそのクラスの現状が解らない…
そして、その"馬鹿共"の中に自販機で出会ったチャラ男が居た。…イジメに参加しなさそうな普通そうな奴もいる。
「……どうやら、"菊花"より腐った奴がこの世に存在していたとは」
「——いんや?高村は腐ってネェよ…」
「だよなぁ?"菊花"に失礼だったな…」
据えた瞳は何を思うのか。——そして、またもや突風が吹き荒れて人々の心を掻き乱す。