魑魅魍魎の菊
——ゾクリッ…
気持ち悪い…。まるで胃が締め付けられるような痛さに襲われた。
と、その瞬間。「カキーンッ!」という音と歓声が沸騰のように沸きだったのだ。
軽く瞳孔の開く私を他所にきっと世界はそれでも巡るんだろうと思う。…酷い胸騒ぎと、やっぱり「神の力」を流し込まれたせいなのか確証はないけど——…
菊花は左腕を摩りながら、ホームランを打った植木をじっと見つめた。
(——何かがこれから起こるか、私が"起こす"かね)
菊花はトートバックを肩に掛け直して、全力疾走で走り出したのだ。——風が吹き起こる方向にと。
そして、早く玖珂君と萩原君を見つけなきゃ!天賦の才能を持つ二人なら"何か"を感じたはず!
それに……この胸騒ぎの正体が解るかもしれない。菊花が辿り着いたのはドッヂボールのコート会場。
周りには当然人が多いのか、中々二人を見つけられないっ…。
「メアドまだ交換してネェし!!」
い、一生の不覚だわ!…取りあえず人の少ない所に行こうと思い、先ほど倒れていた木陰に行けば…
「あら、トカゲさん?」
菊花はしゃがみ込んで、おいでおいでと手繰り寄せたのだ。この時点で普通の女子ではないことが伺えるのだ。
普通の女の子は躊躇無くトカゲさんを手に乗せたり、体に蛇さんを巻き付けません。