魑魅魍魎の菊
——ピィィッー…!
試合終了のホイッスルが鳴り、正影と龍星が助っ人をD組が見事に勝利。泣いて喜ぶD組にまたもや二人のファンが増えたというのも言うまでもない。
(…迫り寄る、憎悪に似た空気)
背筋が凍てつく感覚に襲われると、自販機で出会った三人の生徒がこちらを睨みつけており…何やらブレスレットのようなモノをこちらに翳していた。
人々は違うコートで違う学年の人気な先輩が試合をするということで、そっちに流れて行って…あまり人数も少ないが…。
少人数に混じっている菊花はこちらを見据えて、ニヤニヤと厭らしい笑みを浮かべているということは…何かしでかすはずだ。
井上穂積は唾をゴクリと飲み込んで、「……や、やめろ…」と小さく呟く。その意図を知ってか知らずが、その男から放たれ床に落ちるブレスレット。
「……やめろっ…!」
「……井上、やっぱテメェはムカつくんだよ」
その声が正影達にも聞こえた瞬間だった、中心核のような男がブレスレットを力強く踏みつぶそうとした時!!
菊花の開いていた掌が閉じられた瞬間、「ぎゃあぁぁあああああ!!」という断末魔が響き渡った。
その断末魔が同時に聞こえた歓声によって掻き消され、白目を剥いて倒れていく生徒に悲鳴を上げる女子生徒。
(…フフッ、中途半端なワルが粋がるな)
菊花は——図書室で物の怪を地獄に葬った時のような恐ろしい眼をし、スナップを小さくするともがき苦しむように倒れて行く生徒が大量発生した…。