魑魅魍魎の菊
「ちょ、ちょっと待ってよ?!ち、魑魅魍魎の主と陰陽師だって?!」
「俺のことスルーかよ井上」
「ご、ゴメンっ…。で、でも……妖怪と陰陽師は対立する存在じゃないか…」
井上君の慌てた様子を気にせず、玖珂君は式神を使って井上君の傷の治療に勤しんでいる。
「「対立してる」」
「じゃ、じゃあ…何故っ……!!」
「…と言われてもね…。そこら辺は色々と事情があるわけさよ井上君。だから追々」
「それより——お前はあまり俺等の存在に驚いてネェな?」
俺がそう問いかければ、グッと押し黙る井上。…高村から、コイツも俺等と一緒の境遇というのを聞いたが…。一体何なんだ?
「……ぼ、僕は…」
その瞬間、井上の赤・青・緑・黄色の水晶が光り出したのだ。
——我らの主から離れろ、
菊花は素早く立ち上がりながら、身構えて妖力を放出する。そこに現れたのは——炎を纏ったトカゲさんだった。
(……さて、ここで私の交渉力が試されるわね)
龍星は驚きながら、愛する美鈴が作ってくれた弁当を食べる手を止めて瞳を見開かせていた。
「さ、サラマンダー?!」
「……この女、胡散臭い」