魑魅魍魎の菊
「…《ホムンクルス》という存在を本当に知っての発言か」
「当然。《妖精の書》と《ホムンクルス》、パラケルススの繋がりというよしみで仲良くしようよ」
穂積は厭らしく笑う菊花に何か"罠"のようなものを感じてしまった…。あの笑みに隠れているのは、純粋な探究心なのか。はたまた、邪心なのか解ったもんじゃない。
じわりと嫌な汗が背筋を流れて、口元が引き攣るのを感じる。——間接的に手に入れてしまったこの能力、それを狙っているのか…
「……貴方が造り出したのですか、」
「いいえ?私は"神の領域"とやらに足を踏み込む馬鹿じゃないわ」
パラケルスス著「ものの本性について」に書かれている事によれば、ホムンクルスはフラスコの中でしか存在出来ないはず…。
「一応"亜人"という分類になっているらしいからさ。ウチの百鬼夜行に列を連ねているわ」
「え、ええええぇぇぇ?!??!」
「お、オイ!!あの百鬼夜行の中にそんな伝説級の奴居たのかよ?!」
あれら。気がつかなかったのかね、玖珂君。話の輪に入れない萩原君は完全に傍観を決め込んでいる。
「ちょ、ちょっと先輩!!ホムンクルスはフラスコの中でしか存在できないはずじゃ…!」
「そうだぞ女!……そして、パラケルススが死んで何百年経っていると思っているんだ?!"あの男"にしかホムンクルスが造れなかったんだぞ?!後に誰かが成功したというのか!!!!」
サラマンダーさん怒らないでください。無茶苦茶暑いッス。
「だーかーらー。そういうのは全て本人に聞いて頂戴。今週は本人、何か忙しいらしいからテストが終わってからにしようか」
うん、そうしよう!リチャードったら、意外に家庭的だからさ今美鈴のお洋服作るのに一生懸命なのでね。
「って、勝手に自己完結するなっつうの」
「えぇー。傍観を決め込んでいた萩原君には言われたくないし」
「俺には、今一つ解んネェ世界だからな」
そうやって、美鈴特製のハンバーグが美味しそうだぞ!