魑魅魍魎の菊
「あとは……《見えない何か》を見える素振りでも見せちまったんだろう?」
正影が溜息まじりに言えば、コクンっと頷く穂積。偶々人気の無い場所でブレスレットに話しかけていれば…
人に見られたのか、気味がられて。元々口下手で無口、こんなやぼったい容姿をしているし体育も得意じゃないから徐々に周りから疎まれ始めた。
人間なんて一番わからない。何をしでかすのかもわからない。時より奇怪で突拍子も無い行動をしでかすからだ。
「不条理な連鎖って奴か」
冷静に言い放つ龍星。……いじめというものは、不条理の連鎖以外何ものでもない。
事の発端は何でもない、小さなことなのに。——どうしてだが、こういう哀しいことが起ってしまうのだ。
それの解決方法って何なのであろう。
(怖かったんだ、)
誰も助けてくれなくて、誰も口を聞いてくれなくて、誰も僕のことを見てくれなかった。
日々やってくるのは、冷たい視線、冷笑、嘲笑、暴力。意味も解らない罵詈雑言。
やり返してやるだなんて思ったことない、そんなことは望んでいない。
ただ——
——平和に暮らしたかっただけなのに。
「穂積君、お姉さんの胸に飛び込みなさい!この菊花さんに妙案がある!」
穂積は手繰り寄せられるように、菊花に抱きついてぎゅっと抱きしめるのだ。それを面白くなさそうに見つめる玖珂の若頭。