魑魅魍魎の菊
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昼休み、B組に現れた"井上 穂積"に正影と龍星はぽかんと口を開いていた。
その変わった姿に誰もが驚愕したであろう。
「…お、おまっ…本当に"あの井上"か?」
「そうだよ、萩原君。……"菊花"先輩がやってくれたんだ…」
照れながら笑う井上はとても輝かしくて、この休日で一体何があったのか。
「にしても……」
((可愛いな…))
いやはや正影よ。俺は男に可愛いという感情を抱いた事はないが、今の井上の姿は物凄く可愛い。
綺麗に、凛々しく整えられた眉。余分な産毛は剃られてつるんとした白い肌。黒いやぼったい髪は切りそろえられて、シャギーがいれられている。
何より、その黒髪はやぼったかったので「アップルティーブラウン」いとう色のヘアマニキュアを入れたらしい。
「って…全て、"菊花"がやったのかよ?!」
「う、うんっ……。髪を切ってくれたのも、ヘアマニキュアを入れてくれたのも…全部先輩」
ヘヘッと照れながら笑う井上にこちらも笑顔が零れてしまった。何より、アイツは本当に他人のプロデュースなら得意らしいな。
この学校、風紀は緩くて髪を染めるのはOKだがピアスはダメだというなんとも微妙な規律がある。
井上は椅子を引っ張り出して、俺達と一緒に飯を喰う事に。その左の手首にはブレスレットがあり…
意識して探れば、「見えない何か」の気配を感じ取れる。
「に、似合ってる、かな……?」
「おぉ、似合ってるぜ?さすが菊花、加藤のプロデュースも完璧にやったしな」
「だなー。井上、これからモテだすぞ〜?」
からかい口調で萩原が言い放てば、顔を真っ赤にして戸惑っていた。きっとこういう女の子っぽい反応が良いんだろう。