魑魅魍魎の菊
菊花は暑さにだらけきった表情をし、またもや植木から餌付けされたストロベリー味のロリポップを口にしてた。
そよそよと吹く風を感じ、駐輪場の前を歩いていると——
自転車に鍵を差し、ブリックパックの「いちごみるく」という可愛らしいジュースを飲んでいた玖珂君。
「なんつう可愛らしい飲み物を飲んでるの」
「…別に、好きだから良いだろう」
玖珂君は怪訝そうな顔をしながら、私の額にデコピンを——!!
「あ、あだっ!!」
「——はぁ…。おめーさ、何でそう"地味"なんだよ…」
「ちょっとォォ!!人が気にしていることを一々ど突くな!」
「……ていうか、井上に会ったぜ」
「おっ!感想はどうかね!渾身の力作ッスよ!」
いやはや、嫌がる井上君を組敷くのは楽しかったなぁ。涙目でお姉さんのことに「や、やめて…」と抵抗する姿に思わず萌えたぜ…。
あまりの可愛さに理性という言葉の意味が解らなくなっちゃった♪
「オイ…。何良からぬこと考えてんだよ。涎を拭け」
「じゅるりっ……お、おっとっと…。菊花さんは一線を我慢したよ」
菊花は腕で溢れた涎を拭いて、再び感想を聞いた。
「まっ…。良いんじゃねぇのか?何をレクチャーしたか知らネェけど、クラスや他の連中とも徐々に溶け込んでいるそうだ」
…つーか、一瞬コイツの顔から影が伺えたんだけど。絶対に良からぬことをしたに違いない。
「おめー…。何かやったろ」
「いじめた奴等に悪霊を夢枕に立たせただけ」