魑魅魍魎の菊
「いだだだだ——っ!!!」
正影は思わず菊花の頭を鷲掴みにして、ギシギシと音を奏でる。その口は引き攣っており、今にも殴り出しそうな勢い。
「こ、このクソアマ——!!なんつう面倒なことをしでかすんだよ!」
「ちょちょちょっと?!私はアイツ等脅しただけだってば!」
「"だけ"って何だよ?!他になにかしようとしたのか?!」
俺は菊花を解放して、ギロリと睨みつけるがあの女は飄々としてやがる。
もし奴らが陰陽師の存在を知って、ウチに依頼なんぞ来たら面倒事になるのは目に見えているのによ…。
毎回毎回、いつもいつも…
「テメェは何をしでかすんじゃあぁぁぁああ!!!」
「怒らないでよ!《玖珂の若頭》に万が一面倒な仕事回って来たら、こっちで揉み消すからァァ!」
「揉み消すだと?!このクソアマ……テメェが一番厄介なんだよ!」
既に取っ組み合いになっており、通り過ぎる生徒が珍しそうに見つめる。
それもそうだ。あの"玖珂正影"はあまり怒りという感情を露に知らないからだ。そして言い合っているのは地味な女だ。
一体何があったのか…
「はぁ?!私が厄介って……————それもそうか」
ぽんっと手を叩く菊花。しかも顔がにこやか。
「——勝手に納得してんじゃねぇぞ……。まだ、」
「何してんだ。——高村」
パシッと、俺の腕が誰かに掴まれた。その面を見れば——球技大会に"菊花"を連れ去った男だったのだ。