魑魅魍魎の菊
そしたら、あの男は化け狐の背中に乗り。その頭を撫でていた。
少しだけフカフカで気持ち良さそうと思っていたが、私の来世にいちゃもんを付けられそうなのでその考えは放り投げたのだ。
「お前、長生きしたら絶対に妖怪になるパターンだ」
「取りあえずアンタは同性にモテるタイプだよね」
軽く睨まれたので口笛を吹けば、化け狐が笑いながら尻尾を振る。
「……地味な妖怪になって、お空の星になっちまえ」
「地味なことは否定しないけど。私は"人間"だから」
「正影、早く行くぞ。皆が待っている」
化け狐の声で女装趣味(?)だろうあの男はお空の星になる勢いで夕闇に消えて行った。
鴉の鳴き声が徐々に激しくなり、私は踵を返しながら屋上を出る。
野球部のことは気になるけれど、その内誰か目を覚ますだろう。
コツンコツン、と響く自分の足音に少しだけ優越感を感じて私は軽くジャンプする。
「残念。私の方が一枚上手よ、女装趣味——」
ストンっと、菊花が踊り場に着地すると。
窓からやって来たのか、彼女の肩に一羽の鴉が止まったのだ。
「行くぞ、鴉丸」
「——御意、菊花様」