魑魅魍魎の菊
05.可愛い女の子の特権?
えっと…お土産デス。
——ひらり…
下駄箱から落ちて来た可愛らしいピンクの手紙を拾い上げ、溜め息をついたのは…
「あれ?正ちゃん、またラブレター?」
背後からひょこっと現れた幼なじみ「松野 由衣」は感嘆の声を上げながら、靴に履き替える。
——麗しい容姿をした青年、「玖珂 正影」はまたもや盛大に溜め息をついて由衣と一緒に教室へと向かうのだ。
(……これも俺の美しさが罪なんだ)
と訳の分からないことを考えていると、由衣が「キャアァァ〜!!井上君おっはよ〜!」と叫びながら井上に抱きついていた。
「……ぐ、ぐぅう……ま、松野さん…おは、よう…」
「もう〜!最大級に可愛い♪あたしのお嫁さんにしちゃいたいぐらい!」
「おい松野。井上を放してやれ、何か可哀想だ」
「そうだぞこの陰陽師オタク。人間のことも考えろ」
あれから井上は俺達と一緒に行動するようになり、必然的に由衣とも知り合う形になって懐かれている状態だ。
——というよりは、愛玩動物のようになっているような…。最近慣れつつあるこの光景がどうしてだか平和だと思う。
つか平和だろ…。こんな癒しの井上が居るんだ。
「おはよう玖珂くん…」
「おう、おはよう井上」
やっと由衣から解放された井上は安堵の息を吐いて、こちらを見上げて来る。何でだろうか、そこらの女子より可愛いと思う。
「ねぇねぇ二人とも聞いてよ!正ちゃんったら、またラブレター貰っているのよ?何かここまでモテるとムカつくよね〜」
「はぁ?…また貰ったのかよ玖珂」
龍星は呆れた口調と目で正影を見つめ、「加藤にどやされても知らねぇぞ」と言うのだ。
「は、ハハッ…。さすが玖珂くん…モテモテだね」
「「「いや、アンタもだから」」」
「ん、んぅ?」
という三人同時のツッコミに対応しきれていない井上は天然だと判明した。見事な変貌を見せた井上は上級生を筆頭にしてモテはじめ、今や大人しい井上を陰からそっと見守ろうの会が発足されているらしい。
(これは菊花からの情報だ)