魑魅魍魎の菊
(……何転けてやがるんだ、あの馬鹿)
神だけではなく、玖珂正影も窓辺から見つめていた。
呆れたように息を吐き、古典のノートをスラスラと執っていたのだ。面白く無いことに正影は書道も心得ており、物凄く達筆だ。
とある事件以来「加藤 卓」という霊が俺の周りに浮遊しており、今日も浮遊しながら楽しそうに授業を何故か受けている。
そこの所は謎だが、もうすぐでテストだ…。今度から井上を一位から引きずり落として、この俺が一位に君臨してやるんだ。
悪そうな笑みを零していると、突如頭に衝撃が走る。
——バシンッ…
「——…テメェ玖珂、この俺の授業をなんつう面で受けてるんだよ…」
「いや、元々こういう顔なんで」
俺の頭を叩いて来たのは、古典教師の「高畑」。現在27歳で彼女募集中らしいが、乱暴な性格が仇となってか中々女子の人気はないし、彼女が出来ないらしい。
男子には気さくな兄貴(?)として慕われているが、俺にはよく解らん。
「さっきから外見て何瞑想に更けってんだ!」
「いやー…テニス楽しそうだと思って」
「よくもまぁ…いけしゃあしゃあと」
青筋を立てる高畑に横で由衣がクスクス笑っているので、どんな悪戯してやろうかとニヤリと笑う。
「センセーイ。松野さんがこの前、先生のこと"禿げろ、違う学校に飛ばされろ"って言ってましたー」
「ちょ、正ちゃん?!」
「ほぉ……。松野、そんなに俺のことが大嫌いか…。ハッ、松野今からこのページを全て訳せ!!」
「え、えええええぇぇぇええ?!」
由衣の泣き声とともにどっと笑いが怒って、つられて俺も笑っていると思い切り由衣に睨まれてしまった。
(菊花お姉様に言いつけてやる!)
(へーへー…)
加藤は苦笑しながら、由衣に答えを教えていたが意味ねぇだろ。