魑魅魍魎の菊
——派手な装飾をしている理由。
俺が女形のような化粧を施し、女物の着物を羽織るのには理由がある。
理由なくして事が実行されてたまるか。
完璧に修繕された我が家に少しだけホっとし、俺は皆の前に立った。本来ならば、親父の仕事だが——
現在不在の為、指揮は俺が取る。
ざわめきは一気に静まり返るのだ。水を打ったように——
「今日集まってもらったのは他でもない——最近巷で噂になっている百鬼夜行を滅する為だ」
「して正影、どのような策を用意しているのだ?」
小さく手を上げて質問をして来たのは、「朱雀門の鬼・スザク」だった。
奴は平安京の朱雀門に棲んでいたといわれる鬼である。ウチの戦力でも千影と引けを取らないぐらい強い。
多くの鬼が現れたといわれる古代平安の都でも最も恐れられたが、一方では笛をたしなむなどの芸才もあったといわれる。
ウチには鬼は数少ないが、他の鬼や妖怪からも兄貴のように慕われている。双六で一世を風靡し、色々とやらかしたという話は後にしたいと思う。
「最終目的はその《百鬼夜行の頭》を打ち取ることだ」
「だが——情報を聞く限り、荒ぶれた神が成り下がった妖怪かもしれないのだぞ?そこの阿呆な狐のような」
スザクは千影を指差しながら呆れたように溜め息をつく。
「誰が阿呆だ。お前のように数多くの人間の死体から良い所ばかり集め、絶世の美女を作り上げるような変態じゃねぇ」
「俺は変態ではない。理想の女性を創造したのだ、"あの男"が後20日待てば自我を持った人間になっていたんだ」
キッと千影を睨んだスザクだが、少しずつ怒りを露にしている正影に向き直った。
「話が脱線した。で、どうするのだ」
この件が終わったら必ず風紀を正してやる、そう心に誓った正影なのであった。
「確かに、スザクが言ったような事だと俺は思っている」
正影がそいう言えば、一気にざわめきが戻る。大方千影レベルの妖怪を相手をするのは些か問題がある。