魑魅魍魎の菊
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美鈴は目の前に並べられるキラキラと光るケーキに目を光らせていた。スザクはあまりにも微笑ましい光景に頬を緩める。
「い、いただきますっ…!」
「どうぞ、召し上がりください」
あの後、スザクは美鈴の手を引きながら行きつけの喫茶店に来たのだ。美鈴からは高校に行く理由を聞いたので、ここで暫く時間を潰している。
「美鈴、美味しい?」
「はいっ!美味しゅうございます!」
ふにゃりと笑った顔に他の客も顔を緩まして、微笑ましい光景だと癒されていた。美鈴が食べているのは、イチゴタルトで豊潤な甘さが口いっぱいに広がり幸せな気分になる。
「っ〜〜!!お、おいひい〜!」
「そっかそれは良かった、俺も連れて来た甲斐がある」
スザクは夏らしいかき氷を食べている。何だか娘を持ったような気分だな。見た目的には色々と問題があるらしい。
人間というのは一々面倒だ。
「今の生活に慣れたか美鈴?」
「はい。リュウセイも良くしてくれますし、菊花様も沢山のことを教えてくださります」
(——魑魅魍魎の主、)
未だに判明しない菊花の素性。市太郎殿は何かを掴んでいるらしいが、確信が持てないので動けずにいる。
——あの女の「畏」が最近ご無沙汰。それならそれで良いが、何やら嵐の前の静けさのような気がするのだ。
かといって、この幼気な少女を使って情報を得ようとも思わない。恐らく…この子はあの百鬼夜行に加入していないだろう、庇護を受けているだけであって我々に危害は与えてもいない。
「それは良かったな、美鈴」