魑魅魍魎の菊
「——俺のビューティフルフェイスに」
「自分で言う?!」
玖珂君の問題発言に対して、私は奴の胸ぐらを掴みながら叫ぶ!何で見ただけでサイズが解るの?!
「大体!アンタ、私の何処見てのよ!」
「地味な顔なんざ見たくネェから、取りあえず体」
「何ですとォォ?!いつか侮辱罪で訴えやるわよテメェ!!」
「絶対に俺が勝つし。菊花、おめーよ…その地味さ加減は半端ネェぞ?気迫とかねぇし」
「アンタ、私の何を知っているの?!私が地味なのは自分がよく知っているから触れるんじゃねぇよ!」
「ちょっと!あなた達、何なのよ?!」
友人Aは顔を真っ赤にさせながら、胸元を押さえている。…つーか、アンタの体見ても欲情すらしねぇよ。
それに「カナ」とやらはおいおいピーピー泣いてやがる。
「あのさ——…泣いたら全部終わるとか思ってるんじゃネェよ」
「ちょっと玖珂君?!」
俺は菊花の手をそっと下ろして、前に立った。
「ヒックッ……うっ…。酷い、よ…玖珂…くんっ…!」
「そうよそうよ!女の子泣かして最低よ!」
「佳奈が何か悪いことしたわけ?!」
「あははははっ——…」
耳元に聞こえて来たのは、一切の感情を含んでいない笑い声。
冷たさしか感じない、"女"の声…。