魑魅魍魎の菊
「い、痛っ——…」
「大丈夫か?……はぁ、後で保健室行くぞ」
野球部顔負けのスライディングにより、菊花の腕と両膝から血が流れている。ていうか、——なんか話がややこしくなってるし。
「っ——…あ、綾崎"なんか"にあたしの、気持ちなんて解らないよ!!あたしは綾崎みたいに美人じゃないし、スタイルも良くない!!アンタみたいに堂々と出来ないわよ——!!」
突如、「佳奈」は泣き叫びながら綾崎を睨む。——それとほぼ同時に"邪気"を感じられた。
菊花は起こされる体を何とか立たせて、「…まずい」と呟く。そして彼女達の背後に一匹の蛇が——…
「そうだよ!!綾崎も何なんだよ?!いつもいつも…あたし等を馬鹿にして、そんなにモテること自慢したいわけ?!アンタのせいで哀しんでいる娘、いっぱいいるんだし!」
「綾崎こそ、あたし等に説教じみたことばっかり言ってっ!!ホントにムカつくんだけど!」
「っ——…」
さすがの綾崎もこんな力任せに言われると、怯んだのか一歩下がった。
その時、
『——アンタなんか消えれば良い!!』
三人の女子から黒い邪気が一気に放出され、小さな蛇が巨大化したのだ。混じる声はまるで鏡の世界聞いた声とソックリ。
「なっ——!!」