魑魅魍魎の菊
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それから綾崎は「佳奈」達に呼び出されて、謝罪された。本当は羨ましかっただけで…あんな酷いことを言った自分達を許してもう一度友達をやり直してくれと言われたらしい。
あまりにも必死でその気持ちだけで充分だと、綾崎も綺麗に笑ってこの件は一件落着したようだ。
そして、あの告白から後味の悪さを感じていた正影も「佳奈」にキチンと謝罪をいれて何とか丸く収まった…のか?
(余計惚れられません?)
という菊花の心の声を華麗にスルーしたところで、現在高村菊花は図書館の蔵書点検をしているのだ。
現在はテスト前なので、図書室には多くはないが色んな生徒が頑張って勉強している。そして、菊花は沢山の本を抱えながら正影のところへと向かう。
「おうおう青少年達よ、勉強は捗っているかね」
「何様だよ高村」
萩原君は古典が苦手なのか、浮遊している加藤さんに教えてもらっている。何でも加藤さんは一流文系大学の卒業らしくて古典やら歴史関係を選考してたらしい…。
「——てか、何で本屋だったの加藤さん?もっと良い就職先あったでしょうに」
「何でそんな目で見るのォォ?!良いじゃん!俺は書店に務めたかったんだから!」
「残念な加藤をスルーしたところで菊花はテスト大丈夫なのかよ」
「アレ?俺スルー?」
泣きそうになている加藤さんを無視して、「まぁ…なんとかなるさ」と適当に返事をする私。
穂積君はさすが学年一位だけあって、ちょいと頭の弱い萩原君に解りやすく丁寧な説明をしてあげてる!!
(俺は文系だけが苦手だ!)
そして、窓から柔らかな風が吹くのを感じて私は玖珂君の背後にある本棚に本を入れて行くのだ。
にしても……何でそこの美青年達はなんでもできるのかしら。天は彼らに二物おろか色んな物を与え過ぎかと思うのですが…
どぉぉぉぉぉおうして私には何も与えてくれなかったんですか神様ぁぁぁああ!!!!
と、心の中で叫んだ瞬間。
「高村さぁぁああん!!!」
綺麗なソプラノの声が図書室に響き渡ったのだった。