魑魅魍魎の菊







俺は《大槻》に焼きそばとかき氷を渡して、御堂にて足を崩す。



「ははっ、やはり人間の食べ物は美味だね」



美鈴ちゃんは"気"に当たられてかグッタリとした状態で萩原に寄り添っている。そんな美鈴ちゃんの手をひたすら握っている萩原とうちわで風を送っている井上。



俺達の目の前で青い着物を羽織った"少年"がこの《大槻神社》の土地神である「大槻」だ。
その素顔は未だに謎であり、青い蝶を象った仮面が今日も不気味で妖艶。幻想的な美しさといったらあの「ストーカー狐」と引けを取らない。



「テメェ……何飄々としてやがる、少しは危機感を持ったらどうだ」

「玖珂の若頭、そうカリカリするもんじゃないよ。どうだい?皆で宴でも開こうよ」

「あ、あの…玖珂くん。物の怪の方?」



と、その時井上が控えめに言って来た。そうだ、コイツらに協力してもらおうと思っていた所だ。

俺はすかさず萩原と井上を「大槻」に紹介をした。やはりコイツ等も俺と一緒に過ごして来たから物の怪のランクも解るようになってきたらしい。




「私はこの地の土地神である"大槻"という物だ。昔から玖珂家には庇護を受けて来た」

「で、何を企んでいるんだ玖珂。用事があるならさっさと済ませろ、美鈴がぐったりしてきてる…」

「——…りゅ、せい……大丈夫」

「だが、」



美鈴の顔色は徐々に悪くなり、汗もびっしょりとかいている。呼吸も多少荒くなってきたのである。



(……おや、蛇の物の怪がどうして)

大槻は小さく首を傾げるが、部下を呼び寄せて布団を用意させたのだ。



「大槻様……この物は」

「どうやら疲れているみたいだから、そこらに布団を持って来な」


そこに現れたのは、白い蛇が擬人化したものだった。耳元までに切りそろえれたウルフカットの白髪が美しい。


 
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