魑魅魍魎の菊
「ありがとな。えっと…」
「……私は蓬莱(ほうらい)。大槻様の命だ、礼なら大槻様に」
無表情に淡々と言いのける姿に小さな苛立を感じた龍星だったが、その感情を敢えて押し込めた。
「で…いい加減に説明をしてくれても良いんじゃないかな…玖珂君」
井上の一声で俺は口を開いた。
「神狩りの阻止を手伝ってもらいたい」
「「神狩り?」」
二人の間抜けな顔に仮面の下で笑う大槻をスルーだ。
「読んで字の如くだ。神を狩る、だ」
「オイオイ待てよ!ンだよそれ!」
「そそ、そうだよ!何でそんな状態なことをさせようとしているの?!」
最近、玖珂の土地で「神狩り」が目立って来たいるのだ。最初は信仰や参拝が無く消えてしまった土地神だと思っていたが…
どうやら調べていく内に第三者の仕業だと判明した。今日までに5人の神が消えたり、滅される寸前まで来ているのだ。
この悪行三昧がもし「高村菊花」の仕業ならば、俺はこのプライドにかけてあの女を滅する。
あの時みたいな失態など犯しやしない。
そして、今日。大槻縁日など格好の狩り日だ。仕事というのは護衛である。
この二人なら、充分な素質と力を持ているから信頼できる。
外には他の玖珂の物や結界だって張った。
「……そ、そんな他に適任はいたんじゃないかな?菊花先輩とか…」
「そうだぞ。あの女は最低だとしても、力はある」
「首謀者かもしれねぇ奴に頼ってどうする」
(これは、良い機会かもしれない)
菊花が一枚噛んでいるのか、噛んでいないのか。