魑魅魍魎の菊
菊花は大槻から刀を引き抜いて、首筋に添えるのだ。
所々から卑怯だ、やはりこの女を滅するべきだと声が上がるわ。
「…逃げ場は、ねぇぞ」
「やりたいようにやれば良いじゃん?」
正影も抜刀をし、菊花に狙いを定める。狐の面をしているがどんな面をしているか手を取るように解る。
「——このクソアマ、単身で乗り込むとか馬鹿じゃねぇ?」
「愚問を言わないでよ。別に単身でも玖珂君を倒せるし」
にやりと笑ってから、私は大槻様をもう一度抱え直した。鉄の香りが充満していて面白く無いね。
「舐めるなぁぁあああ!!!」
正影は戦陣を切るようにして、式神を発動させる。右手には炎が纏われ、刀と融合しそうになるのだが、
(誰にも穢させない、)
燃え盛る炎に正義の力を込め、悪を滅ぼす礎になろう——
「"炎斬・地獄"!!」
——ガキィィイン!!
「な、何っ——」
「あなたの相手は私だ。——我は烏天狗の鴉丸」
黒を纏った男が正影の刀を錫杖で受け止めて、他の物の怪も百鬼夜行の輩に取り押さえられている状態。
「——鴉丸、好きにしちゃって」
「御意」
「ま、っ」
喉が急激に乾いて、叫びたいが声が出ない。
(待ちやがれぇぇええ——!!)