魑魅魍魎の菊



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御堂から颯爽と立ち去った魑魅魍魎の主は竹林の奥に居た。
傍らには、血で汚れた神様。



「——……何故、私は刺されたはずだ」


菊花に刺されたはずの大槻は怪我一つしていなかった。ただ、美しい青い着物と仮面は血で汚れていた。


周りには美しい蝶と蛍が飛び交っているわ。——美し過ぎて吐き気がする。



「幻術よ。実際私は大槻様のことを刺していないわ」

「な、何故っ——…」

「そんなこと言わないでよ。私だって無殺生なんてしたくないの」

「で、でわなぜ…」


質問ばっかりする神様ね。

でもま…しょうがないか。
パニックに陥っているのは当の本人だし、玖珂君達のことはスルーしておこう。




「菊花さん"悪者"だからー、形から入るタイプなのさー」


「はっ——?」


今、大槻様の表情が手に取って解るよ。まぁまぁ、そんな私の事情なんてどうでも良いでしょうよ。

私はそれより、この竹林のざわめきを堪能したいの。



「とにかく、大槻様はこういう事態に陥ることは理解してたでしょ?」






瞳をそっと閉じれば、無数の光を放つ虫共。

闇夜に集うのは蝶じゃないよ——







(蛾だよ、神様)




「運命を受け入れるのは感心するけど、抗ったら?」



——ちょーツマンない。


そうやって言う少女に背筋が凍る感覚を覚えた大槻だった。

 
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