魑魅魍魎の菊
このような事態に陥ることは薄々勘付いていた。
大槻は瑠璃丸の手を握りながら——外を見た。竹の花が咲いて、私のアオスジアゲハがゆらゆらと飛んでいてなんともいえない光景だった。
「……何故、それを解っていながら」
「愛されようだなんて、思ってもいなかったのですよ私は」
そんな烏滸がましいことは。大槻はゆっくりと首を振りなった。
(——女とは不思議な生き物だな)
義影は瑠璃丸を見下ろせば、愁暗によって狂い始めた瑠璃丸。死んでもなおも死ねない悲しみは拭えない。
声にならない声で叫び、目は完璧に自我を失っている。心臓も一差ししたが無理矢理生かされている状態。
…普通に生きていたのにこのような末路はあまりにも不憫。美しい男が徐々に醜く狂ったような顔に——
「死ネ死ネ消エロ消エロ、憎イ憎イ殺シテ——殺シテヤルゥウウウ!!!!!!」
ぎゃぁああああああ!!!ぎゃぁあああ!!
あ"ぁああああああ!!!!
(——…あぁ、なんと)
今にも魔道に堕ちそうな瞬間だ。
その時——
「大槻殿、何を!!」
大槻は神の命の根源とも言える宝玉を無理矢理動かされ、抉られたような状態になった心臓の中に埋め込んだのだ!
「——…私を覚えていて。決して忘れないで——貴方の記憶に残れるのならば私は恨まれても構わない、殺されても構わない——」
(——今も、昔も私は貴方しか愛せない)
そして、「大槻」は消えてしまった。
まるで光が弾かれたように。それを見届けたのは、不本意にも儂…玖珂 義影だ。