魑魅魍魎の菊
「なっ——!」
「…やっぱり、」
思った通り、大槻の左胸には宝玉の印である…光の象徴である「太陽」のマークがあったのだ。
…それにしても綺麗な肌をしていらっしゃる、これは私…女として全面的に負けているような気がするんだけど…
(あれっ、目の前が霞んで来たゾ☆)
「ふははっ…。やっぱり睨んだ通り、前大槻がそう容易く死ぬとは思えなかったんだよね。貴方は生かされたのね」
「……何故、」
大槻の声は震え、急激に喉が乾いたのを感じた。私が私であるために…どうしたら良いんだ。
「……どうして、知っているんだ?貴様は……"人間"じゃないのか!!!???」
この女子から感じられるものは確かに「人間」だ。人間の器、だが…そこから流れ出すものは明らかに「物の怪」である。自分と側近の者しか解らないことを、正体不明の女が知っているとはどういうことなのだ——
「黙秘権を行使するわ。だけど、教えて上げる。この菊花様は全知全能なのよ?」
「馬鹿も休み休みにしなさい!!!」
「…今の貴方が言えた義理?アンタも薄々感じていると思うけど、私は——"貴方"を滅さなければならないの、解る?」
——"とある派閥"というやつか。裏で良からぬ動きをしているという…噂。
目の前にいるこの女がそこから派遣されていることは薄々解っていた。
「少し、移動しましょう"カミサマ"?」
その瞬間、菊花の長くなった髪の毛が元の長さに戻り——服装も学校の制服に変わって、狐の仮面も剥がされた。
だが、相変わらず…髪の毛の拘束が解けた大槻は菊花の「影」の能力により、自由に体は動かせずにいる。